日本のIT業界がオワコンにならないための三つの提言

IT先進国の台頭や、改革が進まない日本のIT業界をオワコン化していると見る人も少なくありません。日本の多くの学校では無線LANすら使えず、IT教育も遅れていると言われています。

このような現状の中で、日本のIT業界はどのような取り組みをしていくべきでしょうか。今回の記事では、これから日本のIT業界が成長していくために、三つの意見を提案します。

  • 多重下請け構造からの脱却
  • 労働時間の改善
  • 女性の採用推進

それぞれの提言について詳しく解説します。

多重下請け構造からの脱却

日本のIT業界で見られる悪しき慣習が、多重下請け構造と呼ばれる仕組みです。多重下請け構造とは、大手ITゼネコンが大型案件を受注して、中小企業へ仕事を分割していく構造を指します。

多重下請け構造の問題点は、仕事を仲介する企業が利益を得るため、会社によって報酬格差が発生することです。一次請け、二次請け、三次請け、四次請けと階層が下になる会社ほど得られる報酬は少なくなります。

日本のIT業界において、多重下請け構造からの脱却は簡単ではありません。日本の雇用制度は、多重下請け構造が定着しやすい仕組みになっているからです。

例えば、日本の雇用制度では簡単に従業員を解雇できません。これは、雇用者を理不尽な解雇から守るメリットもありますが、一方でデメリットもあります。受注した仕事の規模に合わせて労働力を調整できない点です。プロジェクトが巨大であれば、受注した会社だけでは対応できず、他の会社へ労働力の提供を依頼することになります。

多重下請け構造の問題をなくすためには、システム発注側が働いているエンジニアの情報を把握できる仕組みが必要です。発注側と個々のエンジニアがダイレクトに繋がることで、仲介企業の中抜きをなくし正当な報酬を受け取れるようになります。

労働時間の改善

日本のIT業界においては、労働時間の長さが問題となっています。プロジェクトが佳境に差し掛かれば、従業員が毎日終電で帰るような光景も珍しくありません。どうして、日本のIT業界ではこのような状況が常態化しているのでしょうか。

それは、残業を前提としてシステム開発プロジェクトが進むからです。例えば、発注側からシステム仕様変更の依頼を受けた場合、受注側の営業は過去の経験をもとにクライアントと交渉します。しかし、過去の経験は残業が常態化している状態での成果によるものです。

もしも、残業をしない条件で交渉すれば、クライアントは「他社はできるのに、どうしてできないのか」という疑問を抱きます。すると、案件受注のハードルが上がり営業が難しくなってしまいます。

労働時間の問題を解決するためには、IT業界が同時に改革するしかありません。国が主体となって労働時間の改善に取り組む必要があるでしょう。

現在、厚生労働省による時間外労働の上限規制導入が進んでいます。しかし、罰則が弱く抜け道もあり、まだ改革が十分とは言えません。時間外労働の防止を徹底するためには、割増賃金の増加や違反の罰則強化等、さらなる改革が必要です。

女性の採用推進

IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)の発達により、ITの需要は高まっています。しかし、日本の労働人口は減少しており、IT業界は人材不足の問題を抱えています。

そこで、注目されている取り組みが女性の採用です。IT業界は、労働時間が長く理系の採用が多いため、女性の割合は少なくなっています。

しかし、IT業界は女性が活躍しやすい仕事分野と言えます。その代表的な理由は以下の通りです。

  • 実力によって評価される
  • 肉体労働がほとんどない
  • リモートワークができる
  • 職場復帰しやすい

一度スキルを身に付けてしまえば、仕事に困ることはありません。さらに、仕事において実力差が明確に出るため、評価基準が分かりやすい点も平等性におけるメリットと言えます。

日本がIT教育を推進することで、情報分野へ進学する女性が増えて、IT業界における女性の比率は高くなるでしょう。実力社会であるIT業界が、男女平等社会を先駆ける存在になることを期待します。