IT業界にいるとしばしば耳にする「ピープルウェア」という言葉。耳にする頻度の割りに説明することができない人も多い「ピープルウェア」ですが、あなたは正しく説明することができますか?
「IT業界で使う」「ピープル=人」「ウェア=服」でGoogle Glassやスマートウォッチのようなウェアラブルデバイスをイメージしちゃっている人はいませんか?
「げっ…知ったかしてた」とか「えっ、違うの?」と思った人は是非とも本記事で学んでいってくださいね。
「ピープルウェア」については言われてみれば今更という気もするのですが、今だからこそ学ぶことも多くあるのです。
簡単かつ分かり易く解説していくので身構えなくて大丈夫ですよ~。
■そもそもピープルウェアとは?
まずは根本的なところからですが、「ピープルウェア」ってなんぞやという方に向けて簡単に説明をします。
ピープルウェアとは、ソフトウェア開発や使用する際の人間の役割や関連するすべてのものを指します。
はい、めちゃくちゃ広いです。キャッチャーなのに外野フライ取りに行っちゃうくらい守備範囲が広いです。ちょっとザックリ過ぎて分かりにくいですよね。もう少しかみ砕いてみますね。
「開発や使用する際の人間の役割や関連するすべてのもの」というのは、要はコンピュータを操作する人間を指しているのです。
ハードウェア、ソフトウェアと並んでピープルウェアはコンピュータ技術の三つの中心的な側面を持つとも言われている学術用語なのですね。
(wiki:
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%AB%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%82%A2)
さて、それでは以降で「なぜ今だからこそ学ぶべき」なのかについて解説をしていきましょう。
■名著から学ぶ「ピープルウェア」
勘の良い人は前項のピープルウェアの概要から察していることでしょう。ご想像の通り、マネジメントについてのお話なのです。
ピープルウェアを学ぶのに最適なのはトム・デマルコ著の「ピープルウェア」という名著がオススメです。もしかしたら新卒の頃に課題図書として読まされたという人もいるかもしれませんね。
それくらい有名な本であり、初版は1987年に発刊されています。なんと30年以上前の本なのです。もちろん内容は改定もされ最新化しているので現代で読んでも違和感はありません。発刊から20年近く経っているのに今もなお読まれ続けているピーターF・ドラッカーの著書「マネジメント」と同じですね。
「ピープルウェア」は名著と言われるだけあって内容も素晴らしいのですが、何より「エンジニアあるある」で読み進められるのが魅力的な一冊なのです。
プロジェクト管理の権威とも呼ばれるデマルコの「ピープルウェア」では数々の名言が書かれています。
以降ではそんな「ピープルウェア」の名言の一部をご紹介していきます。
■「ピープルウェア」の名言
プログラミングをしている人は痛感していることかと思いますが、仕事レベルでのプログラミングは一人で組み切れるものではありません(スタープレイヤーと呼ばれるレベルの人はさておき)。
チームをもってして取り掛からなければ成果を上げることができないのですが、悲しいことにいつの時代になっても過去と同じ問題を抱えているのが実情です。
ここでは「ピープルウェア」の名言をご紹介し、現代の現場における問題解決の糸口にしてもらえればと思います。
直接的な解決に繋がらなくともヒントや意識改革にもなりますよ。
・技術力より人間の問題を解決しよう
「実際のところ、ソフトウェア開発上の問題の多くは、技術的というより社会学的なものである。」
いきなり「社会学的」なんてことを言われると読み飛ばしたくなるかと思いますが、ここでいう社会学的というのは人間を指します。プロジェクトにおいて欠かすことのできない「ヒト・モノ・カネ」のうち「ヒト」が要因であるとしているんですね。
上記の名言の「社会学的」を「人間」に置き換えてみましょう。
「実際のところ、ソフトウェア開発上の問題の多くは、技術的というより人間的なものである。」
非常に分かり易くなりました。本文で書かれていることを簡単に要約してみます。
失敗したプロジェクトの多くでは「技術力の不足」「開発手法」が問題視されることが多いのですが、実際は「人間(社会学的)」な要素の方が強いことをデータで示しています。
ではなぜ要因が分かっているにも関わらず手を打てないのか。答えは「面倒だから」です。
少し乱暴な言い方になりましたが、「技術力の不足」と「人間」の改善はどちらが簡単に行えるか天秤にかけてみると分かり易いでしょう。
技術力の問題であれば、調べたり学んだりすれば簡単に改善できます。なんなら技術力のある人材を連れてくれば良いだけです。しかし、人間の問題は複雑であり、容易に改善を図ることができません。人間関係もさることながら「手抜き」「確認不足」といったヒューマンエラーも問題に該当します。
改善にあたり、管理者は人をいかに「働かせる」のではなく「働きたい」と思わせることが重要と言えるでしょう。
・プログラムは夜にこそできる!フロー状態になろう
「プログラマーの能力差が10倍であることは理解できるが、企業自体の生産性にも10倍の開きがある」
これを読んでいるエンジニアの人からは「そうだそうだ!」と賛同の声が聞こえてきそうですが、「ピープルウェア」ではオフィス環境の良し悪しでプログラムの生産性や品質に影響が出るというデータを示してくれています。
- 一人あたりのスペース
- 静かさ
- プライバシーの確保
- 電話の有無
- 関係のない横やりがないこと
これらは何もエンジニアに限った話ではありませんが、エンジニアの方はオフィス内の人が少なくなった夜や休日出勤での方が、仕事が捗ったという経験があるのではないでしょうか。
特に④⑤が実現できていない企業は多く、担当エンジニアが直接クライアントと電話のやり取りをしたり、別プロジェクトの相談を受けたり(横やり)することは往々にしてあります。
マルチタスクが非効率であることは散々言われ続けている通り、集中できる環境を整えるだけで生産性や品質は向上するのです。
「シングルタスクで集中して作業すれば品質が上がる」なんていうのは当然のことなんですけどね。
管理者は部下が集中できる環境整備、作業者はいかにして集中できるようタスクを整理できるかを考えるだけでも状況は随分と変わることでしょう。
■まとめ
AIが現場に進出してきてあらゆるものが自動化してきている昨今。とどまるどころか、今後ますます自動化、効率化は進むことでしょう。
そのため人にはプロジェクト管理する能力が一層求められるようになってきます。
「ピープルウェア」はソフトウェア開発に関わる人に向けて書かれていますが、「ヒト・モノ・カネ」はいかなるプロジェクトにおいても必要不可欠であり普遍的な要素です。
そのため様々な産業やプロジェクトへの応用が可能なので、開発現場に関わっていない人でも一読する価値があります。
これまで読んだことのない人はもちろん、過去に読んだことがある人でも今読むと違った見え方がしてくるので、これを機に学び直してみてはいかがでしょうか。