ITエンジニアが派遣で働く場として、大きく分けると製品を製造・販売するメーカーや各種サービスを提供・運営している企業のような事業会社とITシステムを提供しているSI(System Integration)企業があります。どちらもITエンジニアは、ITシステム関連業務に関わるのですが、両者ではITシステムの目的が異なり、それにより派遣先での働き方やキャリアプランの違いが発生します。その違いを解説します。
事業会社での派遣ITエンジニアの仕事
事業会社のITシステムは、メーカーなら製造する製品の生産管理や販売管理・材料調達などという製造業の事業運営を支援するために使用します。同様に鉄道や宅配などの運輸サービスや電気・ガス・電話などのサービスを行っている事業会社は、その提供するサービスを安定して効率よく行うために使用します。それらのITシステムのトラブルは、即事業会社の経営自体に影響するため、最優先のキーワードは「安定」になります。このため、最新のIT技術より、一世代二世代前の枯れて安定した技術が好まれ、Webシステム全盛の現在でもクライアントサーバーシステムが保守開発を継続しながら現役で稼働している企業も多くあります。これらの事業会社に派遣されるITエンジニアに要求されるスキルも最新技術よりレガシーな技術に詳しいエンジニアが要求され、年配のITエンジニアががんばっているケースが多々見受けられます。
加えて、事業会社でのITエンジニアの仕事として社内SEという職種があります。社員が使用する社内ITインフラの運用管理や増設・撤廃の手続きと作業、トラブル時の出入り業者との窓口や社員からのIT関係の質問に答えるヘルプデスクなどが仕事になります。この仕事も最新のIT技術に触れる機会は少なく、むしろヒューマンコミュニケーション力が必要になります。
事業会社にとってITエンジニアの派遣費用は人件費コストですからできるだけ抑えたく、全般に残業・休日出勤は少なく、自分の時間は充分取れる働き方ができます。
また、ITエンジニア不足が極まっている昨今、優秀な派遣エンジニアを正社員採用する事業会社も増えており、安定や収入増を望む派遣ITエンジニアにとっては、そのチャンスが得られる可能性があります。
このように、事業会社で派遣業務するITエンジニアは、安定志向ならマッチングしますが、技術面のスキルアップ意欲が高い場合にミスマッチを感じるかもしれません。
SI企業での派遣ITエンジニアの仕事
SI企業が提供するITシステムサービスには、事業会社向けのレガシーな保守サポート業務もありますが、最新技術を提供する新規システム開発のほうが販売も利益も大きくなるため、そのウエイトが高く、派遣先職場も多くなります。現在では、IoT、クラウド、AIなどが技術キーワードになり、そこへ派遣されたITエンジニアは、それらの最新技術に触れる機会が得られますので、技術面のスキルアップ意欲が高い若手ITエンジニアにとっては、モチベーションが高くなるでしょう。
また、技術力のすぐれたSI企業のエンジニアと交流することで、勉強できることも多いはずです。
ただ、SI企業には、二次請負、三次請負という階層構造が残っており、それらの請負会社に派遣された場合は、仕事の内容も限定されたものになることが多く、スケジュール管理なども上位会社次第のため、若手エンジニアには不満が溜まるかもしれません。
また、SI企業にとってITエンジニアの派遣費用は、ITサービスの原価になりますが、顧客への納期が優先する場合が多く、体力的には大変ですが、残業や休日出勤が増えて収入が増えることになります。
派遣先は事業会社がいいかSI企業がいいか
派遣の場合、派遣先や仕事内容はある程度選択できる機会がありますので、これまで説明した事業会社とSI企業の基本的な違いは理解しておいてください。どちらがよいかとは一概に言えず、安定を求めるか、技術面のスキルアップを求めるか、収入を求めるかなどによって左右されます。特に若手エンジニアの皆さんは、日ごろから自分は仕事に何を求めるかを確認しておきましょう。